2018.07.17
先月、スウェーデン大使館にて、子どもへの暴力のない社会実現に
「体罰のない、ポジティブな子育てを~(長くつ下のピッピ)の作家リンドグレーンとスウェーデンの子ども観の学ぶ」シンポジウムが開催されました。
今では「子供の権利」を尊重し、体罰のない子育てを実現しているスウェーデンでも、約60年前までは体罰を使用することに対して肯定的な意見が多かったそうです。
しかし、1970年代半ばに、義理の父親から酷い虐待をうけた子どもの事件があり、その事件をきっかけにメディアなどでも討論の機会が多くも設けられました。
そして、1979年にスウェーデンでは世界に先駆けて
子どもと親法6章1条
「子どもはケア、安全および良質な養育に対する権利を有する。子どもは、その人格および個性を尊重して扱われ、体罰または他のいかなる屈辱的な扱いを受けない」(1983年改正)
を定めました。これにより、体罰を全て禁止し、いかなる体罰も刑事犯罪としました。
では、体罰のない社会で、子どもを親や教育現場ではどのように指導していくんでしょうか?
それは、「NO(いけない)!」を毅然とした態度で、子どもに伝えるということでした。
私たちがスウェーデンに滞在していた際、子どもの通う幼稚園でも、先生は毅然と「NO!」を伝え、子どもを落ち着かせた後、真剣に子どもと向き合いお話をされていました。
子どもの送迎を9歳までは必ず保護者が行う決まりのあるスウェーデンでは、その送迎の際に先生と保護者が話をして、わが子の一日の様子をしっかりと把握することができました。それにより、子どもの状態を家庭と学校で共有することができました。
その後、体罰のない社会で叩かれないで育った子どもたちは、学校などでも相手を尊重するようになり、いじめも激減したそうです。
これは、リンドグレーンが1978年の演説で、暴力が暴力を育むと体罰を否定し「むちで駄目にされた子どもが独裁者や専制君主になる」と主張したことを、よく表していると思いました。
シンポジウムの最後にリンドグレーンの有名なスピーチ「ネバー・バイオレンス」が紹介されたそうです。
「ある高齢の女性が打ち明けてくださいました。むちを惜しむと子どもはだめになると信じられていた頃、、、よくないことをした小さな息子にむちを探してくるように言いつけました。長い間帰ってきませんでしたが、ついに泣きながら帰ってきた息子は「ぼくはむちは見つけられなかったけれど、母さんがぼくに投げつけられる石を見つけたよ。」彼女は突然、息子の目にすべてを読み取りました、、、二人はしばらく一緒に泣きました。その後、石は「暴力は絶対にだめ!」を覚えておくために台所にずっと置かれました。
物事を解決するには暴力以外の別の方法があることを、私たちはまず自分の家庭で、お手本として示さなくてはならないのです。そうすることで、もしかすると少しずつではあっても世界へ貢献ができるかもしれません。」
「暴力は絶対にだめ!」リンドグレーン著・石井登紀子訳より引用
日本でも、「子どもの権利」を今一度討論すべき時だと思いました。
石川(紀)